第8章 セブン・ディズ
翌日は登山。
モゴシャという山には、火山の湖があります。
澄んだ空気と湖がきれいでした。
自然で静かで、つめたい水がこの景色をよけいに美しくしていました。
人は少なく、私たち以外に家族連れとカップルが1組ずつしかいませんでした。
ここからさらにモゴシャに登れるはずでしたが、リフトはとまっていて、それ以上、上に行くことはできませんでした。
バスに乗り、マラムレシュへ行く途中の休憩ポイントから、私たちはCreasta Cocosuluiという山に登ることにしました。
「鶏のとさか」という意味の山です。
森をぬけ、丘を越えて、いきました。
途中、小川があり、のどを潤しました。
遠くには放牧されている牛が見えました。
なんだか、「アルプスの少女ハイジ」の世界みたい。
だんだんとクレァスタ・ココシュルイが見えてきました。
本当に、「鶏のとさか」という言葉がぴったり!
自然の作った芸術というかんじで、ナイフのように鋭い岩が地面から突き出してできた山。
噴火のあとの岩がごろごろしていました。
青い空と、緑の山々と、灰色の岩。見事な絶景でした!
絶壁の、その岩肌にしがみつき、私たちは頂上まで登りました。
「クレァスタ・ココシュルイ制覇!」なんてことは、おこがましくて言えません。
ただただ、自然ってすごいなーとあらためて感じました。
そこで食べたスラニナも最高!
帰り道、丘の途中で、放牧の牛たちに出会いました。
草を食んでいる大きな牛の横、数メートルの距離を歩くのは、かなりこわかった!
だって私のリュックは真っ赤だったから・・・!
獰猛なシェパードの鳴き声が、恐怖心をあおります。
それでも、なんとか牛たちの群れを通り抜け、バス停まで、無事に戻ってきました。
時刻表を見ると、バスはたった今出たばかり!
この後1時間以上も、この何にもない山のバス停で過ごすの?
というわけで、ヒッチハイクをすることに。人生初!
でも、車はそんなに頻繁には通りません。
親指をくっと立て、かっこよくアピールするものの、なかなか車はつかまりません。
大きなトラックが何台も通り過ぎました。
こうやっているうちにバスが来るんじゃないの?!
1台のトラックが私たちの前を通り過ぎたとき、二人で笑いました。
その時、通り過ぎたそのトラックが止まりました。
無愛想なドライバーが、「どこまで行くの?」とたずね、「前の席は3人座っていていっぱいだから、荷台ならいいよ」と言ってくれました。
これがまた、大きななダンプカーで、タイヤに足を掛け、荷台に乗るのも一苦労。
荷台といっても、砂とか砂利とかを載せるところなので、走っている間は空と木々しか見えませんでした。
それでも、バイア・マーレが近づくと、彼は身を乗り出し、場所を確かめ、ここでOK!とドライバーに合図を出し、私たちは無事に帰路につきました。
次の日はラプシュという川へ泳ぎに出かけました。
ルーマニアの川や湖は、なんでどこも濁っているんだろう?
人はそれを当たり前に思って、泳いだりしてることが、少し不思議。
日本人が潔癖すぎるのかな。
それにしても、この川の濁った感じと、土手に生えているしだれ柳のような木は、どうしても私に「アマゾン」を連想させます。
「ワニが出そうでこわい」といって、なかなか川に入りたがらない私をみて、彼は大笑いし、「ルーマニアにワニはいないよ」といいました。
でも、そんなの、ちょっと信じられない・・・。
そんな私を、なんと彼はうしろから、ばーんと川に突き落としたのです!!
びっくりしたのと同時に、なんだ入ってみればたいしたことないじゃない、という気持ちで、背中を押してくれた彼に、ちょっと感謝しました。
優柔不断で、自分の考え方に自信を持てなくて、人のことを気にする私に、いつもこうやって彼は背中を押してくれるんだ。
小さな川だったけど、流されて、また泳いで。からりとしたいいお天気でした。
川沿いには、ひまわり畑が広がっていました。
この7日間、私が彼と経験したことは、一生忘れない。
彼が私のために、いろんなものを見せてくれて、いろんなところへ連れて行ってくれて、二人で共有したすべてのことに感謝しています。
[第9章へ続く・・・]