第7章 湖と月と森
私は23歳の誕生日を迎えました。
彼は、道端に咲いていた花を、花束にして、「おめでとう」と言いました。
私たちはヴァドゥ・イゼイから一度バイア・マーレに戻り、フィリザ湖へ向かいました。
バスは、ヴァドゥ・イゼイから山を越えて町に行くのですが、途中で休憩をします。
休憩ポイントには小さなお店があり、乗客たちはタバコを吸ったり、サンドイッチを食べたりしていました。
そこで乗客の一人、かわいらしいおばあさんが、私のところに来て、笑顔で握手を求めてきました。
遠い国から来たアジア人に感動していた様子でした。
きっと彼女は一度もルーマニアから出たことがないんでしょう。それどころか、マラムレシュからすら、出たことがないのかもしれません。
そんな彼女にとって、自分の村を訪れる外国人は、村に対する誇りでもあり、喜びなんだなーと感じました。
バスに揺られて、山の中を進み、木々の合間から湖が見えたとき、思わずため息が出ました。
山に囲まれた湖、フィリザ。
私たちは水着に着替えて、さっそく泳いでみることに。
地面は、泥みたいで、足はふごんで沈んでいきそう!
しかも浅瀬から突然深くなるので、びっくり。
水は、決してきれいとは言えず、深いところに何がいるのか・・・想像がかきたてられてちょっと怖かった。
湖は意外と大きく、私は半分も行かないところで、遊んでいました。
彼はと言うと、一人で向こう岸まで泳いで行っちゃった!そして向こうから呼んでる。
「こっちおいでよー!」と。
私もがんばって泳いだ。
疲れたよー。なかなか進まないよー。こんなに遠いの??
やっと、やっと、やっと着いた。
300mくらいかな。
遠かったけど、来れた!
私はいつも誇りになりたくてがんばるんです。
テントを張り、火をおこし、今日はキャンプです。
ワインを飲んで、スラニナ(豚の脂身の燻製)を焼き、おいしい夕ごはん☆
ワインは1杯ずつしか飲んでないのに、全部こぼしてしまった!
これは、ルーマニアでは、亡くなった誰かが、自分のことを思い出してほしがっている、という意味らしい。
湖と月と森と。美しい夜でした。
すごく貴重な誕生日でした。
翌日。
朝から、またひと泳ぎ。
なんと、その間に、朝ごはんのパンとサラミが盗まれてしまいました!
でも今日はそんなルーマニアの黒い部分にもムカつかない。
近くで魚釣りをしていた男の子が、「来て!来て!すごく大きな魚捕ったんだ!見においで!」と駆けてきました。
なんだか、ブカレストでは見られない、あたたかい光景でした。
バイア・マーレに戻るバス停の前に、湧き水がありました。
彼いわく、ミネラルウォーターで、いろんなミネラルが豊富なんだとか。
私も飲んで見たけど・・・
うげーーーうげーーーーー!!
まずすぎる!!!
塩味というか、なんと言うか、本当まずい。
彼はおいしいと言っていたけど、最初はみんなまずいって言うらしい。
でももう飲みたくないな。
バイア・マーレに戻ると、私たちはお墓参りをしました。
フィリザ湖でワインをこぼしたからね。
その後、彼のおばあさんに会いに行きました。
彼女は、バイア・マーレのアパートで、今は一人ですんでいます。
部屋は、彼女の編んだカーペットやマットや、クッションやタペストリーで、ルーマニア風に飾られていました。
おばあさんは、いろんな時代を生きてきた人。
世界大戦ももちろん経験しています。
結婚し、レンガを積んで、まさに「自分の手で」家を建て、コミュニスト時代がやってくると、その家を取り上げられ、代わりにこのアパートを与えられたそうです。
彼が私のことを紹介し、私もがんばってルーマニア語で自己紹介しました。
おばあさんは彼に「結婚するの?」なんて聞いていました。
彼はあいまいにしていました・・・