第4章 運命
それから私たちはいつも一緒にいるようになりました。
一緒にごはんを食べに行ったり、ディスコに行ったり、飲みに行ったり…。
休みの日には近くの公園にピクニックに出かけて、まったりと過ごしたり、バドミントンをしたり、サイクリングをしたり…。
だけど、毎日会っても、会えば会うほどさみしさは募ります。もうすぐ彼はフランスに発つのです。
ルーマニアは物価も安く、多くのルーマニア人が近隣のヨーロッパ諸国やアメリカなどの国に、出稼ぎに行きます。
彼もフランスに3ヶ月滞在し、仕事をするのだと言っていました。
彼と会っていない時間は、別れの日のことを考え、涙が止まりません。
そんな私に、彼の冷静な言葉が突き刺さりました。
「君は日本に帰ったら、友達だって家族だっている。僕のことなんて思い出さなくなるよ。」
それでも、彼とできるだけ素敵な日々を過ごそう。
悲しみで二人の日々を台無しにしないように一日一日を大切に過ごそう。
彼が思い出す私の顔が笑顔であるように。
アパートに送ってくれた彼に、いつものように「お茶でも」と言うと、彼は「今日はいい」と、そっけなく帰っていきました。
私は一人、ルーマニアで出会ったいろんな人へ思いを馳せていました。
この1年間のルーマニア滞在で、たくさんの人と出会い、別れてきました。
その中でも、やっぱり彼の存在は特別だ、と実感していました。
その時電話が鳴りました。電話は彼からでした。
「さっきはあんな風に帰ってしまってごめん。でもただ声が聞きたかった。」
「君と別れることがどんどん辛くなってきてるんだ。」
私はちょっと反論しました。
「あなたが言ったんだよ。私が日本に帰ったら、家族も友達もいてあなたのことなんて思い出さなくなるって。」
彼は言いました。「僕は夢を見るのは好き、でも現実も分かってる。」
でも私 日本に帰っても恋しいよ、確かだよ。
そしてついにその日がやってきました。
彼は、フランスへ行ってしまいました。
愛してるという言葉を残して。
きっと、これが私たちの運命だったんだな。
私のルームメイトも留学生活を終え、フランスに帰っていきました。
二人で借りていたアパートは、私1人には広すぎて、私はワンルームアパートを探しました。
でも、私の滞在もあとわずかということと、私が外国人ということで、なかなかアパートは見つかりませんでした。
結局、彼が住んでいた部屋を彼の友達とシェアさせてもらうことになり、彼の香りが残るアパートに私は引っ越していきました。
彼からは数日に一度、フランスから電話がかかってきました。
「ビーチにいったんだ」とか「モナコはすっごくきれいな街だよ」という彼のトラベル・ストーリーを聞くと、彼が楽しく刺激的な毎日を送っているんだ、と嬉しい反面、寂しくもなります。
彼がいないルーマニアはつまらない。
私は1ヶ月のヨーロッパ旅行に出ました。
旅行中も彼への連絡は欠かしませんでした。
そんな中。私は彼がルーマニアに帰国したことを知りました。
彼はフランスでの出稼ぎをやめ、もう一つの夢を実現することを決めたようでした。
それは、大学で日本語を勉強すること。
彼はこの時、25歳。
だけど彼は、「やりたいことを実現するためには、遅すぎるなんていうことは何一つない」 と信じていました。
ヨーロッパ旅行の最終国スウェーデンから、バスでプラハへ、そこからブカレストへ列車で1日。
ブカレストに着くと、彼が笑顔で迎えてくれました。
1ヶ月と2週間ぶりの再会。とってもうれしかった。
それと同時に、たった1ヶ月でこんなにも寂しくなってしまうなんて、帰国後、二人はどうなっていくんだろうという不安もありました。