第2章 予感

私の留学生活は1年間の予定でしたが、春が来る前に一時帰国をすることにしました。
帰国の数日前、メール友達の彼から突然、電話がかかってきました。

「一度会いませんか」
2002年3月。
彼にはじめて会う日、私は緊張しまくって、大学広場のメトロの駅で、彼を待っていました。
それまでルーマニア人の友達からいろんな知り合いを紹介され、会ってきましたが、こんなにも緊張と期待をしたのは初めてでした。
どんな人が来るんだろう?どきどき。

そこに現れた笑顔の長髪男。
第一印象は、とても優しそう、正直そう、そして安心感を与える雰囲気。
彼は「マリア・タナセ」(ルーマニアのフォークソング歌手)のCDをプレゼントしてくれました。

彼は、ブカレストのプリント会社で働いていました。
小さい頃から日本に憧れていて、合気道をならっていたり、漢字を勉強してみたり、とても親日家でした。
彼の夢はいつか日本に行くこと。
外国で、自分の国を好きだったり日本語を勉強してたりする人に出会えば、誰でもうれしくなるもの。
そんな彼の印象も、もちろん良いものでした。

大学広場近くの「スプリングタイム」(ファーストフードのレストラン)に入り、サラダを食べている間も、その後散歩したチシュミジュウ公園でも、私は緊張のせいで、全然うまく話せませんでした。
彼は、ルーマニアのこと、人のこと、歴史のこととか、街のこと、文化のこと、趣味のこととか、きっとそんなことを話してたんだと思います。思い出せないけど。
私はただ彼の横顔に見とれていました。彼の横顔はとてもきれいでした。
その時、私は思っていました。
「この人のこと、好きになるだろうな」

アパートに帰り、ルームメイトのフレンチガールに冷やかされながら部屋に戻ると、私は熱を出してしまいました。
そして、今までメールでしか話したことのなかった彼に、もっともっと会いたくなりました。

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